43話
ギィイン!
金属の残響を聞き、階段の間際で立ち上がった昇が見たのは、通路で相対する二人の人物だった。眼を凝らし、昇は二者を見つめる。
一人は、逆光のため姿が良く見えない。黒っぽい服装だというのはわかるが、それ以上は性別もわからない。右手に握られているのは金属音の一因であるナイフ。殺気を迸らせるそれは殺人鬼と言うのが適切。
もう一人は、月光を受け、残酷な輝きを放つ双剣を携えし者。真っ白な仮面をしているために正体はやはりわからないが、凍て付いた気配を青き法衣と共にまとい、眼前の人物を凝視している。あちらが殺人鬼ならば、こちらはキリング・マシーンと言った所か。
二人は相手の出方を伺っているのか、互いに対峙したまま動こうとしない。昇はどう状況を読めばいいものかと悩んだ。どちらかが自分を殺そうとし、どちらかが自分を助けたのだ。
どちらに加勢すればいいのかが、全くわからない。一般常識であれば仮面をしているという事は顔を見られたくないからだと解釈出来るのだが、魔術師ならばそうもいかない。魔力を高めるための道具として顔を覆い、自身を別人へと変貌させる仮面は打って付けの品物だからだ。
それに、最悪の場合、両方共、敵、というのもあり得ない訳ではない。