45話
抑揚に欠けた、しかし全ての者を嘲るような声。殺人鬼の足元がぐにゃりと曲がり、対照的に氷は風船のように膨張していく。音もなく足元の氷は砕け散り、水滴も残さず蒸発……否、消滅した。
『魔術方程式』による相殺ではなく、『解体方程式』による分解。相手が手練の魔術師である事の何よりの証明だ。だがその事実にも動じずに仮面は新たな剣を法衣から取り出し、二本の剣で殺人鬼を射殺すように構えている。
二人の姿が消えると同時に鉄の火花が散った。
殺人鬼は電光のごとく相手の急所を最短距離で。
仮面は蜃気楼のように複雑な軌跡を幾重にも描きながら。
それぞれの鋼を繰り出す。
シュイン、キィン、カィン!
闇に響く金属音は、互いに捧げる鎮魂歌のように夜に奏でられる。
ざっ、と互いに距離を取り、再び跳びかかろうとしたその時。
殺人鬼が一歩を踏み出したまま固まってしまった。仮面も相手の行動が何を意味しているか図りかねたのか、繰り出した左足を踏ん張り急停止。二人は互いを見つめたまま動こうとしない。
一瞬の静寂。
先に動いたのは殺人鬼。彼は鋭利な刃で空間に弧を描く。暗がりのために表情はおろか、出で立ちも見えなかったが。
くすり、とプラスチックのような声で嗤った。
「「!」」