48話
「いただきます」
蒸気が立ち込める元冷凍米とよく冷えた納豆。両者をかつかつ、と口に掻き込み、
「しっかし……もぐもぐ……あれも大変だが……もぐもぐ……これも大変だな」
口の中に物を入れながらも器用に喋りつつ、自らの両手に持っているものに眼を向ける。右手に持っているのは箸、左手に持っているのは一枚の手紙。『昇へ』、と書かれているそれには『母より』、という言葉で締め括られている。
昇に実母は、いない。いない、というよりは知らない、と言った方がいいのかもしれない。
「……端山さんに心配はかけたくないんだが」
八年。時間は充分にあった。彼等は、『播磨』から捨てられた自分に、それこそ一心に無償の愛情を注いでくれた。
義母も。義父も。義弟も。
皆、良い人だ。そんな人達の愛情に応えるべく、常に自分に言い聞かせた言葉。
『はやく、ぼくもかぞくにならなくちゃ』
それだけを考えた数年間。それでも、とうとう一線は越えられなかった。注がれる愛情は重い鉛となって両肩に圧し掛かり、月日が経つごとに、自分の心の中だけで、彼等との距離は広がっていった。
それは更なる自分の負担となり……
そんな自身の負担を悟ったのだろう。端山の両親には、高校に入学すると同時に『一人暮らしをしてみないか?』と提案された。