三日月の絆その2

メニュー| 32話 | 33話 | 34話 | 35話 | 36話 | 37話 | 38話 | 39話 | 40話 | 41話 | 42話 | 43話 | 44話 | 45話 | 46話 | 回想参 | 47話 | 48話 | 49話 | 50話 | 51話 | 52話 | 53話 | 54話 | 55話 | 56話 | 57話 | 58話 | 59話 |

48話

48話

「いただきます」

蒸気が立ち込める元冷凍米とよく冷えた納豆。両者をかつかつ、と口に掻き込み、

「しっかし……もぐもぐ……あれも大変だが……もぐもぐ……これも大変だな」

口の中に物を入れながらも器用に喋りつつ、自らの両手に持っているものに眼を向ける。右手に持っているのは箸、左手に持っているのは一枚の手紙。『昇へ』、と書かれているそれには『母より』、という言葉で締め括られている。

昇に実母は、いない。いない、というよりは知らない、と言った方がいいのかもしれない。

「……端山さんに心配はかけたくないんだが」

八年。時間は充分にあった。彼等は、『播磨』から捨てられた自分に、それこそ一心に無償の愛情を注いでくれた。

義母も。義父も。義弟も。

皆、良い人だ。そんな人達の愛情に応えるべく、常に自分に言い聞かせた言葉。

『はやく、ぼくもかぞくにならなくちゃ』

それだけを考えた数年間。それでも、とうとう一線は越えられなかった。注がれる愛情は重い鉛となって両肩に圧し掛かり、月日が経つごとに、自分の心の中だけで、彼等との距離は広がっていった。

それは更なる自分の負担となり……

そんな自身の負担を悟ったのだろう。端山の両親には、高校に入学すると同時に『一人暮らしをしてみないか?』と提案された。