34話
「結構当ってるぜ、びっくりした。特に感染呪術に関しては九十点つけてもいいな」
昇は昇で腕組みをしながら感心したように頷く。
「残りの十点は?」
「まず、どんなに肌身離さず持っていても、物品じゃ呪いは掛けられん。これが減点五。それから、この五点はちょっと酷だが……プラシーボ効果ってのはハズレじゃないんだが、正確じゃない」
? と疑問を浮かべる司影に昇は、身をテーブルに乗り出して説明しだす。
「昨日の『精神集中』の話は覚えているか?」
「ああ。お前のように馬鹿の一つ覚えのごとく『オレは出来る』って思い込むことで魔法使うって話だろ」
昇は司影の言い様に額にしわを作り、
「なんかひでえ言われようだが……呪いは、それの応用さ。相手の『自分は呪いで殺されるんじゃないだろうか』という疑念。それは自身に向かう負の『精神集中』、要するに自分を傷つける可能性をもった『魔力』だ。それを呪術師自身の『魔力』とミックスし、相手の負の『魔力』を巧く誘導してやって呪術方程式をかけるのさ」
だから、プラシーボ効果だけとは言えん、と昇は結論付けた。
ふーん、と気がなさそうに言いつつ、司影が尋ねる。
「じゃあ、『呪いなんてありえねえ』と思っている奴を呪う事は出来ない訳?」
「いや、可能だ。強力な呪術方程式を操るに足る『魔力』と、自身の『魔力』が、相手の『魔力』を上回っているという二点の条件が揃えば。さっき言った誘導云々は並みの魔術師がする事で、相手の魔力を粉砕する呪術になってくると相当な使い手さ。一族ごと絶滅させたい場合は血の繋がりを利用した感染呪術と類感呪術、それに意思呪術を併用するな。もっとも、現代の魔術師間では呪術の使用は禁じられているけどよ。さっき言った通り下手すりゃ一族ごと滅ぼしかねねえから、呪術は。万一呪術を使うような魔術師がいたら、そいつには一族ひっくるめての制裁が下される。その国にある魔術師の機関―日本なら『陰陽寮』だが―から抹殺者が送り込まれて」
……かなり物騒な話になってきた。なのにどうしてこいつは平然と自分の話を聞けるんだ?