52話
どうすんだ、と司影は逆に昇に問い詰める。
確かに、彼女は……全く困っているようには見えない。
「思いっきり冷静そうに見えるがな、俺には」
そう、彼女はあれだけの人に囲まれても眉一つ動かしていない。
まるで人形を相手にしているかのような振る舞い。いや、そもそもそこには何も存在していないのではと思わせる冷めた目付き。動揺や困惑という言葉を知らないのだろうか、彼女は。
「ち、違うだろ! 突然の事に何していいのかわかんねえんだよ、きっと!」
「そうかぁ?」
思考がストップしているのなら、口をポカンと開いていたり、眼を瞬かせていたりと、少し間の抜けた顔になっているはずだが。
人だかりの中、昇は欠伸を一つつき、
「まっ、別に大した事ないだろ。とっとと学食行こうぜ、腹減った」
髪をボリボリと掻きながら学食へ足を向ける。
だが知り合いの気配がついてこない。
数歩進んだ所で、
「何してんだよ」
後ろを振り返ると、司影はじとっ、と昇を無言で見つめていた。
「おい、早く行こうぜ」
立ち止まり、再度促す。
返答はない。しばらくして、
「オマエ、結構冷たいヤツだったんだな」