三日月の絆その2

メニュー| 32話 | 33話 | 34話 | 35話 | 36話 | 37話 | 38話 | 39話 | 40話 | 41話 | 42話 | 43話 | 44話 | 45話 | 46話 | 回想参 | 47話 | 48話 | 49話 | 50話 | 51話 | 52話 | 53話 | 54話 | 55話 | 56話 | 57話 | 58話 | 59話 |

57話

57話

「へえぇぇえ。じゃあレオナ、ヨーロッパにいたんだ。具体的にはどこに居たんだ?」

「ミュンヘン。それから……ルーマニアの……ブカレストに、チューリヒ……」

「よくそれで日本語出来ますね、先輩」

呆れ気味に昇が敬語で感想を述べる。もっとも司影は普段通りの口調の上に呼び捨て。年齢の垣根を全く感じさせない話し方は、好意的に捉えるならアットホームと言っても良いだろう。

(否定的に見りゃ、無礼、とも言えるだろうがな)

それは血を見そうな発言なので、口に出さない。いや、出せない。

「他には? 他にはどこに行ってどんなことしたんだ?」

眼を輝かせ、司影は己の好奇心を隠しもせずにオールストレート三球勝負で聞く。その勢いに玲於奈の目尻がやや下がり、口元が微かに動く。苦笑、したのだろうか? あるいは微笑、したのか? 正直、昇には彼女の表情を読むことは出来そうにない。

 キーン、コーン、カーン、コーン。

 授業開始の予鈴だ。

「ヤベ。オレ、次体育なんだ!」

 パンが入っていたビニール袋にゴミを詰め込み、

「……俺に片付けろ、って言うのか?」

「レオナ、また明日話聞かせてよ、じゃ!」

 昇にビニール袋を問答無用で押し付けると、元気良く司影は右手を振って走り去っていく。

「こけんなよー」

昇のおちょくりに、『うるさい!』という嬉しそうな声が返ってくる。