35話
「つうかお前、怖くねえのか、本当に?」
人智を逸する力を使う者が側にいるかもしれないというのに。幽霊よりよほど怖いと思うのだが。
「別に。お前がオレに呪いかけるっつうんなら、木刀でボコボコにしてやって死なない程度に水責めして……っつうよりさ、オマエ、本格的な魔術使えねえんだろ? どうしてオレがそんなオマエにおっかなびっくりしなきゃいけんのさ?」
確かに、自分には『刻印』の力以外は大した事は出来ない。魔術で身体能力を強化しなければ、剣道で三段を持つ彼女の方が木刀を持てば、はっきり言って強い。
だが、ここでも司影は天井に視線を向けていた。そして微妙に頬に赤みがかかっている。その事実に思考する昇は気付いていない。
「そうだ、類感呪術はどうなのさ」
わざとらしい会話の逸らし方ではあったが、幸いにも昇は思考から引き戻されたばかりで、司影に話を逸らされた事実に気付いていないようだ。
「六十点。確かに、人を呪い殺して、その形が似通っている他の人間に危害が及ばないっていう点は良い着目点だったんだが、まるっきし類感しないかって言われるとそうじゃない」
「類感呪術ってのが実際には全然ないって訳じゃないのか?」
納得出来ないように尋ねる司影に、
「司影。人間は、どうして手足が二本ずつ、それに頭があって、脳があって、てな具合に大概は決まった形を持って生まれてくるんだろうな」
昇は全く関連がなさそうな話題を振る。
「何言ってんだよ? 遺伝子がそうなるように生ませるんだろ? それがどうして類感呪術と関係してくんだよ?」