三日月の絆その2

メニュー| 32話 | 33話 | 34話 | 35話 | 36話 | 37話 | 38話 | 39話 | 40話 | 41話 | 42話 | 43話 | 44話 | 45話 | 46話 | 回想参 | 47話 | 48話 | 49話 | 50話 | 51話 | 52話 | 53話 | 54話 | 55話 | 56話 | 57話 | 58話 | 59話 |

38話

38話

「誰だかわかるか?」

「わ、わかる訳ないだろ。遠目だったし、知らない奴だし。それがどうしたんだよ」

何でもない、と呟き昇は思考する。誰かを炙り出すのに意図的に魔力を放出したのなら、それは時差を用いた残留魔力の可能性が高い。本人が目撃される危険性を犯したくないからだ。

もっとも自分は誰かの恨みを買うようなことはしていないし、狙われる理由もないのだから、自分が残留魔力を施した魔術師の『相手』、という事はないだろう。目的は気になるが、あえて探る必要もない。

……? ここで昇は、何故司影がこの場にいるのかという事に思い至る。

「……っつうか、どうしてお前がここにいる?」

やっと話をする気になったかとでも言いたそうに腰に手を当て、司影は問う。

「昨日の話の残留魔力ってのは何なんだよ」

「残留魔力か……大別すると三つのパターンがある。一つは昨日みたいに術者がやる気になって、かつ、方程式の方に術者が振り回されちまって、方程式の消化不良から力が場に残っちまうタイプ。これは見境なく人に悪影響を与える。魔力ってのは蓄積されやすいものでよ、とっとと処理しないと周りの人間の『負の意志力』を取り込んだりして厄介極まりない。『負の意思力』のせいで誰か自殺なんかした日にゃ俺一人じゃ手に負えん。人間の死ぬ時の、俗に言う『怨念』はハンパじゃなく意思力が強いからな。だからそうなる前に、ぱっぱと片付けるのさ」