38話
「誰だかわかるか?」
「わ、わかる訳ないだろ。遠目だったし、知らない奴だし。それがどうしたんだよ」
何でもない、と呟き昇は思考する。誰かを炙り出すのに意図的に魔力を放出したのなら、それは時差を用いた残留魔力の可能性が高い。本人が目撃される危険性を犯したくないからだ。
もっとも自分は誰かの恨みを買うようなことはしていないし、狙われる理由もないのだから、自分が残留魔力を施した魔術師の『相手』、という事はないだろう。目的は気になるが、あえて探る必要もない。
……? ここで昇は、何故司影がこの場にいるのかという事に思い至る。
「……っつうか、どうしてお前がここにいる?」
やっと話をする気になったかとでも言いたそうに腰に手を当て、司影は問う。
「昨日の話の残留魔力ってのは何なんだよ」
「残留魔力か……大別すると三つのパターンがある。一つは昨日みたいに術者がやる気になって、かつ、方程式の方に術者が振り回されちまって、方程式の消化不良から力が場に残っちまうタイプ。これは見境なく人に悪影響を与える。魔力ってのは蓄積されやすいものでよ、とっとと処理しないと周りの人間の『負の意志力』を取り込んだりして厄介極まりない。『負の意思力』のせいで誰か自殺なんかした日にゃ俺一人じゃ手に負えん。人間の死ぬ時の、俗に言う『怨念』はハンパじゃなく意思力が強いからな。だからそうなる前に、ぱっぱと片付けるのさ」